読書感想しりとりリレー2005その3・石田衣良『うつくしい子ども』

 どうもこんばんは。更新の頻度が増えるごとに、童貞だの乳首だの巨乳だのといった単語が頻出し、アイドルの名前が埋め尽くされる、煩悩に支配されたこの日記。月に1、2回の割合で回って来るリレーで、ちょっとは切り替えしていこうと思います(でもたぶんすぐに元に戻るけど)。

 橋立様から次のお題の連絡があった際に「候補が2つあるのですがどっちを選びますか」と聞かれました。「う」が3回連続するとはいえ、候補をいろいろ選んでいたので、橋立様には『いやでも楽しめる算数』を選択していただくことにしました。

 で、私は何を選ぶかだったのですが、三島由紀夫『美しい星』って候補がありましたが、「う」が続く上に三島も続いてどうする、ということでタイトルに「美しい」とつく別の小説を選びました。

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なぜ弟があんなことをやったのか、その理由を探そう。
(中略)
それが最悪のおこないでも、誰かがわかってやる必要があるのではないか。そうでなければ、犯罪をおかした人は一生ひとりぼっちになってしまう。最低の人間だって、誰かがそばに寄り添ってあげてもいいはずだ。それがぼくの弟ならなおさらじゃないか。冷たいご飯を噛みながら、そう思った。

 千葉県と埼玉県に隣接するという架空の街、常陸県夢見山区。緑豊かなニュータウンで、九歳の女の子が奥ノ山の山頂で、遺体のまま発見される。犯人は三村和枝(かずし)、中学一年。
 三村家一家は突然、黒い渦に巻き込まれる。カズシの兄、幹生は、クラスメートである学級委員の長沢静(せい)やボーイッシュな女子・八住はるきの協力を得て、弟の犯行の動機を探り出す……。

 言うまでもなくこの事件のモチーフは酒鬼薔薇事件。ただし、この小説は事件をなぞることで、犯人の少年自身や報道に対して疑問を投げかけてはいるが、それは傍流のテーマ。

 はるきが怒ったようにいう。
「長沢くんは変態なんかじゃないよ。きれいなものときれいになることだけが好きで、たまにそれをひとりで楽しんでるだけ。そういうのはただの趣味で、変態じゃない。私だって、月に一回ぐらい誰とでもいいからセックスしたいなあと思うときあるよ。でも私も変態じゃない。そういうのは普通のことだよ。誰も傷つけてないのに、変態だなんて自分を傷つけるのはおかしいよ。」

 植物博物学に長けた幹生は、弟の事件のことで、長沢やはるきと一層、心の交流を深めるが、それと同時に彼らは彼らなりの秘密を打ち明ける。それは「誰にもわかってもらえない」という深い絶望に裏打ちされたものであった。
 最後に事件の真相もはっきりするが、それも「絶望」が大きくかかわっている。

 「みんなとちがう自分、という不安」をどう受け止めるか、という普遍的なテーマを、現代の事象を絡めながらすっきりとまとめている。すっきりしすぎな気もする。美形の女子と交流を持つならもっと何かがほとばしっていると思うのだがどうか。どうか、って誰に言ってる。