読書感想しりとりリレー2005その11・大槻ケンヂ『のほほん雑記帳(のおと)』(角川文庫)

 お盆はいかがお過ごしでしょうか。はてなアンテナmixiを見ているとやっぱり東京ビッグサイト、という方々が少なくないようですね。私は普通に実家で墓参りでした。


 橋立様からのお題は、「。」ではなくて、「の」ということで、いろいろ調べてみました。
 野坂昭如野坂昭如コレクション』・・・ん、がついてる。福田和也『乃木坂血風録』・・・ページを開いたとたんに全面的に「偉そう」オーラが。白岩玄野ブタ。をプロデュース』・・・ジャニ主演でドラマ化ということでタイムリーっぽいんだが、梗概を聞いた上では読む気にならず。村上春樹ノルウェイの森』・・・なんだかいまさらな感じだ。

 私個人では「以前に取り扱った著者をまた使うのはやめよう」と思っていたのですが、回を重ね10回を過ぎて、そこまで限定していると選ぶ本もなくなってくるので、あっさりと大槻ケンヂから選ぶことにしました。何せ彼の著作名には「のほほん」が付いているのが多いですから。
 『のほほんじゃダメかしら』(集英社文庫)にしようと思ったんですけど新橋の書店で見当たらなかったので、初期の代表作『のほほん雑記帳』にしました。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041847044/250-5376429-3708202

 1992年単行本刊。雑記帳というだけあって、恋バナやらバンドの話やら書評やら音楽評やら、統一感まるでなし。筋肉少女帯メジャーデビューからバンドブームのあおりを受けて絶頂期にあったが、本人の意識はそれに反比例してダウナーだった。それに単なるインディー系のロック兄ちゃんでしかなかったのに、メジャーシーンに持ち上げられ、プライベートの意識とパブリックの
顔を使い分ける余裕もなかった。その余裕のなさは、自分の童貞喪失や本気で好きでふられた人の話をぶっちゃけていることからもわかる。ついでに人気が出て儲かってる頃でもあり、一番の楽しみが月々の預金通帳の額なんてさみしいことまで暴露している。

 また、巻末では自分のお勧め本を上げているが、『宇宙人死体写真集』といった選出だし(しかも入手困難だし)、女性がモテるためのお薦め本に、横溝正史『犬上家の一族』を上げたりといった縦横無尽なブックガイド。これが女性誌に載ったというのもすごいけど。サブカル少女向けとしてはうってつけのガイドになるのかな。
 「ポンと空いた時間、旅や仕事の合い間に、あまり頭を使わず、ほどよい深さで読書を楽しみたい総ての人々にとって、この本はズバリはまると思います。」と著者があとがきで言ってるように、お盆休みのように頭を使いたくない時にはまさにぴったりの本だった。選んだ本がこれでよかった。