読書感想しりとりリレーその7・大槻ケンヂ『リンダリンダラバーソウル〜いかす!バンドブーム天国』

http://ore.to/~cafe/sp/2005_shiritori/index.html

 もう次のお題が回ってくる時期に来たのですか。こないだ書いたばっかじゃん、と思えてくるくらいな心境です。

http://d.hatena.ne.jp/harumachi-an/20050519

 「り」がつくタイトルの書名を検索してみると「料理」「リストラ」「量子コンピュータ」なんていうおおよそ自分に縁のない内容ばかり出てきたのですが、自分でも紹介できる本があってよかった。しかし以前に買って読んでいたのに見当たらなかったので今回改めて買ってきました。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840105553/249-5299340-3048367

 バンドブームというと、80年代末期の日本の音楽史やロック史において「負の歴史」扱いされることが多いのだが、私としては90年代以降の「テレビの主題歌やCMのタイアップで何百万枚売れるけど誰も歌えない」「ビジュアルだけ露出するけど本人たちのインタビューやライブは一切なしで、特定の作詞作曲家による無記名バンドの量産」という事態の方がよっぽど負の歴史ではないかと思う。というのも自分自身がバンドブームの頃中高生だったので、どうしてもこの時期に対してある程度の郷愁を持って見てしまう。
 amazonで書評を書いている人も、そしてオーケン本人も、「あの頃」を知らない人に読んでほしい本だと言ってる。
 本書は大槻ケンヂがバンドブームの渦中の一人として、自分から見たバンドブームの始まりから終焉までを綴っている。オーケンの彼女としている「コマコ」という女の子はフィクションの存在なのだろうが、その他はほとんど実名。亡くなった方々も多い(池田貴族、HIDE、どんと、中尊寺ゆつこもこないだ亡くなったし)。
 何よりもオーケンでしか書けない内容が多い。オールナイトニッポンの第一部パーソナリティーになった時の第一回目の放送はボロボロだったとか。(オーケンはこの時の担当ディレクターに「僕の友達の卓球の方が話がおもしろいから卓球を紹介する」などと言って電気グルーヴ前の石野卓球の話をしたけど一笑に付されたとか。僕はこの時の放送は聴いてないのだが、聴いた友達によると「全然ダメ」だったらしい。この日にギターだったかが急遽脱退したらしく新ギターを募集していたことも聞いた。この時期の二部は伊集院光)同じレコード会社でメジャーデビューしたジュンスカイウォーカーズに並々ならぬライバル心を燃やしていたとか。(「JUN SKY WALKER(S)」というロゴの中には意味不明のカッコがある、とわざわざ指摘していたのはオーケンだけだと思う)やはり同じレコード会社のMr.Childrenの桜井が「こんな大勢の人の前で歌うのはきっと最初で最後だ」とビビってたとか。
 バンドブーム終焉時のゴタゴタなど読むと「やっぱり大人って汚い」という思いと「大人の世界なんてこんなもん」という思いがクロスする。って30代の自分が「大人が汚い」も何もないか。
 音楽が産業に取り込まれず、バンドやライブという形式でファンと地続きだった牧歌的な時代の空気を書いた一報告書となっている。
 ところで、この本のことをずっと『リンダリンダラバーソウル』だと思っていたら副題があったのですね。次は「る」ではなく、「く」でした。