読書感想しりとりリレー2005その4・酒井あゆみ『人妻風俗嬢』幻冬舎アウトロー文庫(ISBN:4344402030)

http://ore.to/~cafe/sp/2005_shiritori/index.html

 どうも。月曜の祝日を含む三連休になると、このあたりの時間帯が精神的にきつくなります。しかも感想文アップの期日がほんとは2日前だし。

http://d.hatena.ne.jp/harumachi-an/20050317

 橋立様が選択されたのはアガサ・クリスティの「ブラック・コーヒー」だそうで。

・末尾が長音…一文字前で 
 例:「バッテリー(りー)」→「(り)リボンの騎士

というルールですから、次は「ひ」ですね。
 「ひ」というと「人」とか「秘密」なんていう語が頭につくタイトルでいろいろありそうなんですけど、あえてひねくれた選出をしてみました。幻冬舎アウトロー文庫からです。『家畜人ヤプー』を文庫化してるところです。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344402030/ref=pd_sim_dp_4/250-5963871-0253069

 私の持論なんですけど、今の時代「変態」が普通で、「普通」が変態なんだって思いますね。だって、こんな狂った世の中、普通でいられるのが異常なんだって思いません?

 のっけからロキノン風味の発言を引用した。本書は1999年単行本で発売されている。つまりインタビューはだいたい1998年頃。
 本書に出てくる女性の区分でいうと、

・風俗嬢である、ということでプレイと交換で報酬を得ている。
・戸籍上の夫がいる、またはいた。(別居、不倫、離婚などで家庭が崩壊している場合を含む)

となるわけで、「お金」で、または「家庭」できちんとしていなかったように受け止められがちな女性である。少なくとも表社会であれば。
 だが、本書に出て来る17人の女性は17通りの理由で、風俗業に真っ正面から取り組んでいる。
 恋愛や性を語る際、男性より女性の方が過剰になりやすい傾向がある。これは恋愛というものが女性の中で比重が高いせいだろう。人妻という位置から愛や性を濃縮100%で語っている。

 あと、「掲示板やamazonの商品紹介で自分語りすんな!」って憤る人にはお勧めしない。だってこの本、著者も文庫解説者(両者とも風俗経験者)もあちこちで自分語りばっかだよ。普通じゃない話が満載なのに、読めば読むほど彼女たちの、酒井あゆみや解説者も含めてだけど、その境遇が普通の出来事のように思えてくる。

 しかし風俗に入った目的が果たされても、彼女は働き続ける。そればかりか風俗専門誌などのマスコミにも顔出し(お店の女の子を紹介する雑誌の記事に顔を出さず出ること)するようになった。私はマスコミに顔出しするという大胆な彼女の行動にビックリした。普通、人妻たちは顔出しを極端に嫌うからだ。
「だって、私の顔なんてどこにでもある顔じゃないですか。似てる人なんてゴマンといるし。バレるような飛び抜けた美人だったら、今ごろ別な人生送れてますよ。マスコミに出れば、何にもしないでもお客さん来るんですから」
 結局マスコミに顔出ししていても、夫はおろか、誰にもバレることはなかった。

 この「どこにでもある顔」を持った女性は、本書の発刊直前に、自ら命を絶っている。